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電力分野を超えていく
地下水のスペシャリスト
サステナブルシステム研究本部
地質・地下環境研究部門

野原 慎太郎

大学時代に取り組んだこと 室内実験や浸透流解析による岩盤の水理特性に関する研究
入所してから取り組んだテーマ
  • X線CTを使った室内実験と数値解析による地盤内の油移行に関する基礎研究
  • 北海道電力の揚水式発電所の建設現場に出向しグラウト工事に従事

研究のやりがい

点と点をつなぎあわせる難しさ

地下水の流れは目で見えるわけではありませんし、調査しようとしても、面的に、連続性を持って評価できるわけではありません。圧力や水質といったデータを点で評価し、点と点をつなぎあわせるとでもいった、見えない部分を想像する作業を伴います。また、地下水は年間数cmから数十m程度しか移動しないことが大半であり、流速が非常に遅いという特徴も評価を難しくさせる要因の一つです。もちろん過去の研究によって代表的なモデルが作られていますが、それですべてに対応することは不可能です。地質でいうと火山性なのか堆積性なのか、水質でいうと淡水なのか海水なのか。その場その場の条件が異なるからです。このように苦労の多い中で、自分の評価やシミュレーションでうまく事象の説明ができた時は、やりがいを感じることができます。

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入所後の印象的な体験

建設現場の生きたデータと向き合う

三年目に北海道電力の揚水式発電所の建設現場に出向させてもらいました。国内最後ではないかという貴重な純揚水式水力発電所の現場で、主にグラウト工事(ダム基礎岩盤にセメントミルクを注入し遮水性を高める工事)に従事させていただきました。学生時代には、岩盤に存在する割れ目の透水性について研究しており、グラウト工事も岩盤の割れ目内の水の流れを如何にして止めるかという作業ですから、少しはわかるつもりでした。ところが、実際にデータを見てみるとわからないことだらけでした。「理想的なデータが出るよう制御された中で得られる室内のデータ」と「ばらつきが多い現場のデータ」の違いを痛感しました。

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現在の研究活動

深度300mでの技術開発

放射性廃棄物の地層処分に関する研究に携わっており、特に岩盤中の物質移行に関する研究に取り組んでいます。放射性廃棄物の地層処分では、地下水によって放射性物質が移動する可能性があり、岩盤の物質移行特性を評価する必要があります。そのため、原位置で行う試験技術としてトレーサー試験の技術開発を行っています。具体的には、共同研究先である日本原子力研究開発機構の瑞浪超深地層研究所の地下坑道で実験を行っています。深度300mに建設された地下坑道から30m程度のボーリングを掘削し、染料やイオンをトレーサーとして添加した地下水をボーリング孔に入れて岩盤の物質移行特性を評価しています。研究がスタートしてから4年ほど経過しますので慣れましたが、始めは足元が見えるエレベーターで地下300mに降りていくのは緊張しました。

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将来の目標

電力分野にとらわれず世の中に役立つ

研究者としてこれから目指すのは、現場に役立ててもらえる技術を開発することです。自分の研究成果が電力の安定供給の一助になるよう日々の研究活動に取り組んでいます。さらにいうなら、電力の分野にとらわれず広く世の中に貢献することができれば、なお理想的です。たとえば、近年頻発する豪雨による斜面災害の評価・対策は、電力の現場だけの課題ではありません。自分の研究成果が貢献できる社会課題はあちこちにあると考えられます。 私の理想を実現するために欠かせないもののひとつが、外部との連携です。自分の研究所だけに閉じこもっていては、得られる情報に限りがあり、成長できません。現在も参加する地盤工学会、地下水学会等の学協会活動を通して、いろいろな研究者と交流して情報収集し、人とは違った物の見方を身に付けていきたいと思っています。

RESEARCH 現在取り組んでいる研究内容
  • X線CTを用いた地質評価法
  • 降雨による斜面安定評価のための数値解析技術
  • 地層処分の安全評価に向けた原位置トレーサー試験技術開発
サステナブルシステム研究本部 電力中央研究所の主要な研究成果や事業活動等について
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