土台づくりに貢献したい
生物・環境化学研究部門
中林 亮
- 放射性廃棄物処分の安全確保に関する基礎研究と技術開発
入所した理由
我々の世代の責任だと感じて
大学では、学部、修士、博士と放射性廃棄物の処分に関係する人工バリア材について勉強していました。そうした中で、福島第一原子力発電所の事故が発生し、原子力発電への逆風が吹くとともに、放射性廃棄物の管理に大きな注目が集まるようになりました。原子炉を運転するにしろ廃炉をするにしろ、必ず発生する放射性廃棄物。それらを安全に処分することは、我々の世代の責任であり、特に人工バリア材を研究していた身としては、なんとか役に立たなくてはならないと感じました。そして、「放射性廃棄物を安全に処分するには、処分方策を議論することが必要不可欠」と考えるように。そうした時に、放射性廃棄物処分の確率論的リスク評価に関する研究者の募集があり、応募しました。
研究の意義
放射性廃棄物の処分施設づくりを支える
放射性廃棄物の安全性評価というのは、評価期間が数千年以上と長期にわたることから不確実性を伴います。しかし従来の安全性評価の手法では、不確実性の問題を取り扱うことが難しく、過度に保守的な対策を取るしかなくなります。すると要求される物理的・化学的性能が高くなり過ぎてしまい、施設を建設し放射性廃棄物を処分することができなくなる可能性が生じます。そうした事態を回避するために研究されているのが、確率論的な考え方を取り入れた安全評価の手法です。
「問題が発生する可能性が高いけど、その影響は少ない」「発生の可能性は低いが、その影響がクリティカルである」といったリスクに応じた合理的な処分施設を実現しようという研究です。
職場の環境
アイデアの芽に肥料を与える
いろいろな職場があり、上司がいますが、電中研には若手に対してチャンスを与えてくれる風土があります。自分の体験でいうと、1つの意見を出した時、おかしな点があったとしても、頭からリジェクトされることはありません。アイデアの芽を摘むことなく、うまい具合に肥料を与えてくれて、今まで一本しか見えていなかった研究の道筋を増やしてくれるといったところでしょうか。また、他に同じ研究所内にいろいろな専門家がいることも、魅力的です。化学、生物、放射線、シミュレーション等、自分の専門外の研究者たちと簡単につながることができます。電中研における異分野とのコラボレーションは、あなたの研究の可能性をどんどん広げてくれるはずです。
次のチャレンジ
安全評価の方法論を積み重ねて
現在、原子力規制委員会をはじめとする様々な場で、「放射性廃棄物の処分」等に関する規制をどうするかという議論が行われています。互いの知識を深めあい、進化につながる議論は、研究活動において非常に重要です。ただし、その議論にあたり参照する情報やデータは、論理的で科学的な裏付けを土台とする必要があります。放射性廃棄物の処分に関しては、住民、規制者、事業者の皆さんが正しい議論をするための情報やデータを導く土台がまだ確立されていません。放射性廃棄物の処分は、長期間にわたって取り組むべき課題であり、皆さんの理解を得ながら進めていくべきだと思います。自分の研究した方法論(安全性評価の手法)をどんどん積み重ねて、皆さんの正しい議論の土台づくりに貢献できればと思っています。
- 確率論的リスク評価を取り入れた放射性廃棄物処分の安全評価
- 原子力事故後に発生する廃棄物のインベントリの解析的な推定と合理的な処分方法の検討
- 安全評価上の重要核種となる放射性炭素(C-14)の溶出形態の解明