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キャリア採用座談会

Members

  • 高橋満のサムネイル写真
    Mitsuru Takahasi 高橋 満
    〈前職〉 国家公務員
    〈現在〉 エネルギーイノベーション創発センター
    テクノロジープロモーションユニット
    上席
    2019年入所
    理工学研究科 電気電子工学専攻
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    Tomoyuki Yamada 山田 智之
    〈前職〉 外資系コンサルティング会社
    〈現在〉 エネルギーイノベーション創発センター
    カスタマーサービスユニット
    上席研究員
    2018年入所
    工学系研究科 電気系工学専攻
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    Sunao Shimizu 清水 直
    〈前職〉 国立研究開発法人
    〈現在〉 材料科学研究所 電気材料領域
    上席研究員
    2019年入所
    基礎工学研究科 物質創成専攻

「入所までの経緯と現在の仕事」

大学時代の研究と、
その分野に取り組み始めた時の思いを
教えてください。

高橋

大学は電気電子工学専攻で無線通信、特に携帯電話の通信速度を高速化する研究をしていました。今もそうですけど、当時から持っているのは「何か世の中に役立つことをしたい」という思いです。そこで、携帯電話というインフラに関わる研究を選びました。

山田

学部時代はエネルギー経済の研究室で変圧器に新素材を用いた場合の経済性のシミュレーションをしていて、大学院では数理工学の研究室にて、細胞が集団として振る舞う場合の数理的解析をしていました。

清水

私は固体物理学、特に銅酸化物高温超伝導体における超伝導の解明を目指した実験研究をしていました。超伝導とは電気抵抗がゼロになる現象で、この現象を電線に用いるとロスなく電気を運ぶことができると期待されます。今の研究にも通じる領域だと思いますね。

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山田

高橋さんは「インフラに関わる」という言葉がありましたが、清水さんはどのような想いで研究に取り組まれていたんですか?

清水

私は研究室に配属されたばかりの頃は、研究テーマに対する興味はもちろんありましたが、「これを一生続けて行きたい」というほどの強い想いはなく、基礎研究の「終わりのないおもしろさ」から博士過程まで研究を進めて行きました。とはいえ、自分の研究を追求していくにつれて、エネルギーをはじめとする社会問題にも関わってくることにやりがいを発見し、取り組む意味を見出したというのも事実です。

山田

なるほど、そうだったんですね。実は私は学生時代、工学部にいながら技術的なハードウェア単体にはあまり興味が持てなくて。たとえば、高性能なゲーム機や高機能なカメラというハードだけがあったとしても、面白いソフトが欠けていたり、機器を扱うユーザーがいなかったりすると真価が発揮できないですよね。だから、「技術は実際に使われてこそ価値がある」という感覚を持っていました。そこで、技術が社会からどう使われるか、という観点から、技術と経済の両方を扱うエネルギー経済という研究領域に興味を持ちました。

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前職での仕事や研究を教えてください。

高橋

前職では約5年、中央官庁において勤務していました。毎年のように異動をしていたので担当していた仕事はさまざまですが、宮古島に新しく多数の大規模施設をつくる業務が印象に残っています。いわば一つの町をつくる仕事です。その中で工事の発注・進捗管理、予算の管理などをしていました。ほかにも、中央官庁らしい仕事としては、国会答弁の資料を作成するといったこともやっていました。

山田

私は新卒の時にシンクタンクに入社し、データ活用コンサルティングのプロジェクトや関連する新規事業の立ち上げプロジェクトに従事しました。その後は外資系コンサルティング会社へと転職し、全社的な改革プロジェクトや、データ解析やソフトウェアを活用したプロジェクトに関わっていました。

清水

私は材料科学や物理学の研究を進める研究所に所属し、ナノスケール材料における新機能の探索を行っていました。具体的には、カーボンナノチューブやグラフェンなどのナノ材料から電界効果トランジスタを作製し、超伝導特性・磁気特性・熱電特性を調べる研究です。高い機能や付加価値を持つ新たな複合材料をつくりだすことを目指していました。

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電力中央研究所に興味を持った理由や
選んだ決め手は何ですか。

高橋

やはり自分にとっては、「社会貢献できる」というのが大きいですね。電力自由化をはじめ、電力業界全体が大きな変革を遂げていく中で、電力中央研究所(以下、電中研)自身も否応なく変革を求められることは明らかです。比較的小規模な組織である電中研においては、自分の思いを仕事に反映できる機会が多いのではないかという期待があり、そのような環境の中で変革という荒波を突破していくことが、結果的には「社会貢献」に大きく寄与できそうだと感じたことが、電中研を選んだ決め手です。

山田

電力業界は法的にも技術的にも変革に直面しており、新しい考え方を求めているように見えたので、問題が山積みの電力業界は「やるべきことがたくさんあるぞ」と興味を持ちました。前職のシンクタンクもコンサルも、クライアントの問題の解決を手助けするのが主なミッションだったからです。
個人的な志向として、技術面でもっと深い所に入り込みたいと思っていたので、長期的に専門性を磨くことができ、「技術をつくり」、「技術に根ざした解決方法を提案できる」点が、電中研が面白そうだと思った理由です。

清水

私は前職で材料に関する基礎研究を行なっていました。とても良い研究環境ではあったのですが、次第に自分の研究を通して社会が直面する問題に貢献するにはどうしたらよいだろうか?と考えるようになりました。ちょうどその頃、以前から共同研究でお世話になっていた電中研の研究者に、材料科学研究所についてお話を伺う機会がありました。そこで、電中研は応用・実用を目指した研究機関であると同時に基礎研究に立脚した学術機関であるというお話を聴くことができ、これがきっかけとなり電中研に強く興味を持つことになりました。さらに、材料だけではなく電力・エネルギーに関わる多方面のエキスパートが在籍していることがわかり、共同研究を通してさまざまな面白い研究ができるのではないかという期待を持つようになりました。

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現在の仕事内容について教えてください。

高橋

私は研究管理という業務を担当しています。大学の研究室とは違って、電中研では幅広い研究分野の研究者が一体となって運営されているため、それに必要な研究所全体に関わるマネジメント業務をしています。具体的には、総務的なサポートはもちろん、調整事項の取りまとめ、予算の管理・配分など、所属する多くの研究者を繋げるための業務の全てといえるでしょう。さらに、部外者を含む委員会の運営など、外部と研究所を繋げる仕事も行っています。

山田

私は電力系統の中で需要家、つまり利用者に近いところの研究をしています。具体的には、需要側機器と呼ばれる再生可能エネルギーや蓄電池、需要機器などを、どうすれば電力系統との協調を促すことができるのか、を扱っています。最近、仮想発電所(VPP)やエナジー・アズ・ア・サービス(EaaS)と呼ばれる新しいビジネス領域が生まれています。関連制度について海外事例を参考にしながら調べたり、その影響のシミュレーションをしたりして、未来の仕組みづくりに向けた研究をしています。

清水

私が取り組んでいるのは、広い意味で「センサ」の研究です。光や温度、振動などを検知するセンサが今後、今よりも様々な場所・用途で使われるようになると考えられています。そのため、新しいセンサの開発は電力事業へ、そして電力事業を超えた多方面の産業分野への貢献へ繋がると期待されます。電中研の学術機関としてのプレゼンスをより高めていくためにも、いち早く実現できるよう取り組んでいます。

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「電力中央研究所の魅力」

どのような点を魅力に感じましたか。

山田

日本を代表する電力の研究所であり、諸先輩方含め尊敬すべき研究者たちが多くいる環境が、私にとっては一番の魅力でしたね。

清水

あと、電力業界や産業界を念頭においた実用的な研究をメインとしつつも、基礎研究の重要性を強く意識認識しているというところも研究者目線では魅力でしたね。

高橋

そのような研究者の立場とは少し違うかもしれませんが、官庁勤務時には考えられなかったような「自由な雰囲気」が魅力だと個人的には思っています。フレックスタイム制やリモートワークの仕組みが整っているので、みなさん自由に効率よく仕事をしているように感じます。

山田

それは私も感じます。前職では目先の目標に追われがちでしたが、電中研では長期的な目標に向かって研究に打ち込めるのは良いなと。良い意味で放置されるというか、それだけ高い自律心が求められているともいえますが、研究員一人ひとりを信じる懐の広さや、自発的な挑戦を促す職場の雰囲気を感じます。

高橋

制度や働き方だけでなく、人柄という意味でも気骨のある感じはしますね。上司の顔色を伺うことや、右にならえといった風潮がなく、誰もが正しいと思ったことを主張できる雰囲気は良いですね。

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電力中央研究所ならではの強みは
何だと思われますか。

山田

安定した収入基盤を持ち、成果が出るまで時間のかかる技術研究への投資がしやすい環境にあることが挙げられます。また、電力会社の意志決定から独立した組織なので、電気事業に関する長期的な視点の研究テーマを設定できることも強みだと思っています。

清水

あと現場を持っている、現場に行けるという環境も強みではないでしょうか。基礎研究だけをしている機関だと、現場が本当に必要としているものがわかりづらいので。電中研は現場の近くにいながら、基礎研究も両立させることができます。

高橋

研究成果がそのまま現場に反映されるという点で、社会に与えられる影響力は、とても大きいですよね。その一方で、組織としては比較的、少数精鋭なので風通しが良く、一人一人の努力が社会に直に影響を及ぼすことも紛れもなく強みだと思っています。

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「キャリア職員の視点で見る電力中央研究所」

入所にあたって不安だったことは何ですか。

高橋

前職が国家公務員だったため、公務員と民間企業という違いだけでも、大きな環境の変化が予想されました。漠然と「仕事をこなしていけるだろうか……」という不安はありましたが、入所後も周囲からあたたかく指導していただけましたし、キャリア採用というプレッシャーをかけられることもなく接していただけたので、感謝しています。

山田

私は採用に関する募集要項がシンプルすぎて、多少の不安は感じましたね。ジョブディスクリプションがなかったので、期待される能力水準と業務内容が自分にとっては曖昧に思えたのですが、働いている知り合いを通じて詳細を確認したことで解決できました。

清水

私も同感です。どんな研究者が、どんな研究をしているのか、募集要項やウェブページからは詳細な情報や実態はあまり見えてこなかったように感じます。応募を検討している研究者が求めている情報が、全て得られるわけではないのではないかもしれません。私の場合も、電中研で働いている知り合いに問い合わせて、応募前に知りたかった問題は解決できました。

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入所する前と後でどんなギャップがありましたか。

高橋

想像していたよりも自由な雰囲気であることのほか、人間関係も非常にフラットで驚きました。理事や所長といった方とお話させていただく機会も多く、前職に比べるといろいろな意味で距離の近さを感じます。

山田

良いギャップと悪いギャップがありました。良いギャップは電力業界という保守的な業界でありながら、研究者らしく先進的な考え方をする方がたくさんいた点です。何かを変えなければ、という意識を持っている方が多く、とても刺激的な環境にあります。悪いギャップは、電中研は10研究所・センターを抱え、研究分野が多岐にわたっているにも関わらず、分野ごとにどこか閉鎖的なところです。社会問題とされるものは分野横断的なテーマになることが多いのですが、電中研全体として統合的な研究協力をより拡大していく必要があると感じています。

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どんな人材が活躍できると思いますか。

清水

自分の想いがある人ではないでしょうか。長期的に自分の研究に取り組む必要があるので、自分が何をしたいのかを明確に持っている人が良いと思います。

山田

そうですね。私も同感です。仕事のモチベーションとして、目標ドリブンなのか、過程ドリブンなのかも重要だと思います。電中研の研究テーマは短期間で達成されるような目標ではない上、そもそも研究は目標に向かってまっすぐ進めるとは限らないので、目標ドリブンな人はモチベーションが続きにくいのではないでしょうか。研究自体が楽しいとか、自分の好奇心を大切にしたい人のように、過程に焦点を当てている人の方が、モチベーションが長続きするんじゃないかな。組織としての事業やビジネスとしての視点はもちろん必要ですが、それ以上に自分として追求したいことを大事にしている人が多いように見えます。

高橋

研究職だけでなく、事務職としても同じような思考が大切だと感じています。例えば、電力業界が変革していく中、電中研の制度設計を見直す必要に迫られるタイミングがあるかもしれません。そういったことも踏まえ、常に何が最適かを考え、それが正しいと思えば変えようと動く気概を持ち、新しいことにもチャレンジして、より良くしようという考え方を持てる人が活躍できると思います。

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「今後の目標」

組織として改善していきたい点はどこですか。

高橋

自由な研究環境はメリットである一方、指揮系統が曖昧に感じることもあります。たとえば、自由な雰囲気は残しつつも、本部の機能を強化して、ある程度は皆が一つの方向に向かって仕事をするという仕組み作りも必要なのではないかと思います。

山田

電力業界内に特化している気がして不思議な感じがしますね。制度の変革は他業界での経験が参考になることもあるでしょうし、革新的な変化を起こしているIT業界の知見を取り込むことも重要だと思います。業界や分野の枠を越えて、知見を共有する取り組みがあっても良いんじゃないかなと思います。

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今後、挑戦してみたいことは何ですか。

高橋

私個人の課題になりますが、電中研に入所してから自分の知識不足を痛感することが多いので、まずは科学技術に関連した幅広い知識の習得や資格取得を目指しています。そして、電中研のさまざまな研究分野をつなげて、新しい仕事や新しいプロジェクトを生み出せないかなと考えています。

山田

そうですね、私は海外研究機関との共同研究や相互協力に興味があります。特にエネルギー経済や電力系統の需要寄りの領域の取り組みは、海外の方が進んでいるので、最先端を学びたいと思っています。

清水

私も同じです。今のところ、国内の大学や研究機関、海外だとフランス、スイス、アメリカなどのグループとの共同研究がいくつもスタートしています。電力業界の研究機関や研究者のネットワークを構築し、より多くの共同研究の機会を作っていきたいですね。

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入所を考えている人に伝えたいことは何ですか。

高橋

電力という生活基盤に直結しているので、インパクトのある業務対象である一方、少数精鋭で、自分の思いを比較的容易に業務手法や仕組みに反映させることができます。こんな環境はなかなかないと思いますね。

山田

これまでビジネス畑で働いてきた私が言うのは変かもしれませんが、私は技術こそが新たな価値を生み出す源泉だと信じています。新しい技術が日夜、世界のどこかで生まれ、国境を超えて広がり、世界中の課題解決につながっています。世の中を良くするための価値を生み出す根幹にあるのが技術であるとはいえ、世の中へその価値を広めるために戦略や仕組みも大切です。技術で価値を生み出すことができるように、創り、検証し、世の中で役立つものへ形作っていく。電力分野におけるその第一線が産業研究所である電中研だと思っています。

清水

研究者の立場としては、産業や電力事業そのものに貢献できることが大きなやりがいにつながっています。課題は山積みですが、それだけ挑戦すべき価値があるということにほかなりません。ある研究者の方がおっしゃっていたそうですが、電中研の風土として、研究すること自体が目的ではないんですよね。研究成果をもって、いかに問題を解決していくのか。基礎研究に真摯に向き合い、問題解決の根っこの部分に挑戦し、広く社会貢献を担えるのが電中研という組織なのかなと感じています。

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