
若手研究者座談会
Members
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エネルギートランスフォーメーション研究本部
エネルギー化学研究部門
物質循環プロセスユニット
2021年入所 -
サステナブルシステム研究本部
気象・流体科学研究部門
海洋環境ユニット
研究員
2021年入所 -
グリッドイノベーション研究本部
ENIC研究部門
地域ネットワークユニット
主任研究員
2021年入所
就職活動で大切にしていたことと、
電中研への入所の経緯を教えてください。

学生時代は、海の表面から深海への粒子沈降について研究していました。卒業後も絶対に研究は続けたかったですし、さらにさまざまな分野のプロフェッショナルと議論できる環境が理想。その一方で、家庭を持ってプライベートも充実させたいとも考えており、我ながら「強欲」な想いを持っていました(笑)。そんななか、研究室の先生が私の分野と近い研究をしている電中研の職員と知り合いで、その縁からインターンシップにチャレンジしました。電中研のことはそのときに初めて知ったのですが、知れば知るほど私の希望にドンピシャにマッチする環境だと感じ、採用面接への応募を決めました。
西野さんと同じく、私も研究を続けたいと考えていました。研究者の就職先として大学教員が候補に上がりますが、私は学生の前で授業することはおそらく向いていない性格。一方で、メーカー研究者になるにも専門性が活かしやすい企業が少ない。そこで、学術と産業の中間の研究機関で仕事をしながら一度視野を広げようと考えました。博士号が評価されることや自身の研究分野を広げていけることを魅力に感じ、電中研に応募。面接の序盤の段階で、入所後に上司となる方と会話をする機会があったことがありがたかったですね。
研究職にとって、上司となる人を知っておくことは大事なことですよね。
そうなんです。上司が自分の研究をどう捉えてくれているのか、どのような環境で働かせてもらえるのかを知っておくことは、将来の働き方に大きく関わると考えていました。最近の電中研はHPで研究者紹介コーナーを設けているので、そのサイトで分野が近い研究者の名前や顔を検索したりもしていましたよ(笑)
私は地球温暖化やプラスチックによる環境問題への関心が高く、大学では、廃プラスチックと木質バイオマスの熱分解による再資源化について研究していました。廃プラスチックの再資源化の研究を続けたいという想いがありながら、バイオマスプラスチックや生分解性プラスチックなどの開発にも興味があり、メーカーへの就職も視野に入れていました。そんな折、学会で口頭発表をした際に、今の上司である方が興味を持ってくださり、その場で質問もいただきました。その後、電中研の横須賀地区に見学にいく機会を頂き、その際に衝撃を受けたのが、設備が充実していたことと、非常に気さくで優しい研究者の方が多かったことです。またメーカーはどうしても短期間での結果が求められ、腰を据えた研究が難しいイメージを持っていました。優れた設備を用いて長期スパンで研究ができる姿を想像することができたため、電中研への入所を決めました。
現在の研究内容と仕事のやりがいや
魅力を教えてください。

未利用バイオマスを有効活用した廃プラスチックの再資源化技術に関する基礎研究に取り組んでいます。現在、プラスチックの再利用の動きは強まっていますが、いまだに6割程度は燃やされてCO2の排出につながっています。廃プラスチックを化学原料や燃料として使える炭化水素に転換するなかで、バイオマス廃棄物も同時に有効利用できないかを探っています。原理は違いますが、映画『バック・トゥー・ザ・フューチャー』のデロリアンのように、“ゴミ”から“エネルギー”を作り出せるような未来を夢見ています。シンプルですがやりがいは、試行錯誤しながら実験を進め、その成果が出たことによる達成感ですね。
すごく夢があるうえに実現の可能性も秘めている素敵な目標ですね。私の研究について、現在電気自動車(以下EV)の普及により、電力系統に対して、大量の電気が入ることによる電気需要の逼迫が課題となっています。例えば、EVは多くの人が家に帰ってくる夜の時間に充電するため、そのタイミングで需要が高くなります。では、太陽光発電による余剰電力が出ているような地域で昼にEVが充電すれば電力の需給バランスが整うではないか?と誰もが思うかと思います。その考えをきちんとデータ分析を用いて証明するというような研究を行っています。電中研単独ではなく、国が公募するプロジェクトや大学や企業との共同研究に参加することもあります。国の公募プロジェクトでは、一般には公開されていないデータを扱うことも多く、知識や考え方の幅が非常に広がります。また、共同研究では、教授やメーカ研究員など私とは異なるバックグラウンドや知見を持つ方と働く機会もあるため刺激を受けます。この、新たな情報や知見との出会いに面白さを感じますね。
陸域から河川を通じて輸送される土砂の動態(凝集・沈降)に関する基礎的研究を行っています。「土砂」というと電力とは関係ないように思えますが、発電所は濁った水の多い沿岸部に建てられているので、取水・排水は土砂の混ざった水と関係する過程です.また、実は放射性核種の一部は土砂粒子に吸着されやすいことが知られていて、土砂の研究を通じて環境中の放射性物質の動態を明らかにすることは、原子力の安全性の確保にもつながります.仕事の魅力は、年次に関わらずその分野の専門家として扱ってもらえることですね。私のチームのメンバーは4人で、その中で粒子の物理に取り組むのは私だけ。入所1年目から「西野さんはどう考えていますか?」とどんどん質問されたことを覚えています。一方でこれは大きな責任を担っているということでもあります。正確な回答ができるように常に専門性を高めていかなければいけません。
電中研の働く環境はいかがでしょうか?

冒頭でも話しましたが、様々な規模での装置で実験できるという環境はすごく恵まれていると感じています。また試料の分析においても、「こういうことを測りたいのですが」と相談すると、それに詳しい研究者が所内にいて、何かしらの分析装置があって、納得の行くアプローチができます。研究環境において、不満はありません。
多様性に満ちた環境は非常に魅力ですね。「電力」という分野横断的キーワードで研究者が集まっているので、各人のバックグラウンドが幅広く、かつ研究分野も多様です。話しているだけで知見が広がり、自分の研究の新たな価値・側面に気づかせてもらえます。また、幅広い分野の研究者が在籍していることは、どんな分野の方とでもつながれるということでもあります。所内でオープンに力を合わせれば、かなり多くの可能性を実現することができますね。労働環境という意味ではほとんど不満はありません。福利厚生が手厚く、休暇も取りやすい。安価な厚生住宅(社宅)もありますし、イベントごとの慶弔・休暇制度も整いつつありますね。事務職の方々が、本当に職員全員のことを考えて制度設計をしてくださっていると感じています。
周囲の職員の魅力や能力の高さを感じた
エピソードを教えてください。

何事にも熱意を持って取り組む方がたくさん在籍しています。本業である研究はもちろん、お昼休みには、すぐに運動着に着替えてサッカーや野球、テニス、ランニングなどに精を出している方も多いです。また、所内では定期的にさまざまなイベントが開催され、この前開催された紙飛行機飛ばし大会では、物理的に計算をして紙飛行機を設計している方もいれば、最も飛距離が稼げる投げ方を何度も試している方もいました。どんなことにでも熱意を持って取り組み、結果をみんなで一喜一憂する雰囲気は電中研の魅力ですし、このネルギッシュさが研究力の基礎になっている気がします。
熱意・情熱といえば、私の同期や若手研究者が中心となって進めている「勉強会」は非常にモチベーションを高めてくれています。雑談のように自分の研究を紹介しあう会なんですが、誰かが「今うちではこういう研究をしていてさ」と話を切り出すと、「こうするのはどう?」「うちの研究とコラボできないかな?」などとみんな活発にアイデアや最新知見を出しあうんです。そこから羽ばたいて予算がついた新しい研究もあり、非常に有意義な会です。自分もこのメンバーたちのように高みを目指したいという刺激になりますね。

最後に、これからの目標を教えてください。
私たちや電力会社などの電力・産業界隈と、大学をはじめとした学術界隈を正しく橋渡しできるような研究者になりたいと考えています。正直、極端なことを言えば、電力・産業界隈は学術界隈を「やっている研究の実用性を評価しづらい界隈」、学術界隈は電力界隈を「現実から遠く離れた課題・目標に目を向けづらい界隈」と捉えるような風潮があると思っています。その考え方の違いから、両者が本当の意味で協調するというのは難しいところですが、電中研の「学術と産業の間」という立ち位置をうまく活かし、使えそうと思える技術、面白いと思える研究のネタを意外なところから掘り起こして、両界隈に提示することで、今よりも本当の意味での「産学連携」のきっかけになれるような役回りになりたいです。
実は今、社会人博士として学位取得の真っ最中で、博士号取得後は研究における自分の裁量がさらに高まると考えています。これまで温めてきた研究や、つながりたい分野に積極的に挑んでいきたいですね。また、就活の軸であった家庭との両立も目標です。この先5年ほどはおそらく西野家の環境が変わっていく時期だと思うので、研究も家庭も大切にしていきたいです。
恥ずかしながら、具体的な未来像は描けていません。まずは、今研究している技術をなにかしらの形で社会に還元するところまで全力で駆け抜けたい。そしてその頃には、資源循環やリサイクルに関する状況は一変していると思うので、自分の持てる知識で新たな課題にチャレンジしていきたいです。