低線量放射線の研究対象領域

遅れていた低線量放射線研究

放射線自体ははるか宇宙が始まって以来、ずっと存在していますが、放射線の人体に対する影響についての研究が始まったのは比較的最近のことです。レントゲンがX線を発見した1895年からまもない1900年代、放射線が健康に影響を及ぼすことがわかり、多くの研究や実験が行われてきました。しかし、これはあくまで高線量放射線の話。100ミリシーベルト以下の低線量放射線の影響についてはあまり研究されてこなかったというのが実状です。低線量域では放射線による健康リスクを他の要因によるリスクと区別することが難しいため、定量的なリスク評価ができなかったというのがその理由とされています。

日本の低線量放射線研究をリード

その低線量放射線が生物にどのような影響を与えるのか。これを解明しようというプロジェクトを日本で他の研究機関に先駆けて開始したのはほかならぬ電中研でした。1987年のことですが、以来、電中研は独自の視点で低線量放射線の影響を解明するための研究に取り組んでいます。とくに放射線影響における線量率の効果に関しては電中研がいち早く着目し、1998年には低線量率放射線長期照射施設を導入。低線量率の放射線が動物や細胞に与える影響の研究を進めています。

放射線防護への反映をめざす

こうした継続的な研究にもかかわらず、欧米でも日本でも成果を国際的な放射線防護体系に直接結びつけるまでには至っていません。そこで次の段階の研究として進めているのが、世界の高自然放射線地域の住民を対象とした疫学調査で得られた結果を裏付けるための機構解明研究。高自然放射線地域についてはインドのケララ州や中国で現地調査を行っており、高線量率の被ばくとは影響の大きさが異なるという結果も報告されています。この結果を生物学的に裏付け、放射線防護体系に直接反映することをめざして、原子力技術研究所での研究が続けられています。

原子力技術研究所

安全で安定的な原子力発電を支えるために、軽水炉発電プラントの安全/保全の高度化、および燃料サイクルの確立に必要な基盤技術の開発を進めているほか、放射線防護に関する研究と情報発信、ヒューマンエラー防止に関する研究にも取り組んでいます。