建設から30年以上が約7割

電力関係者にとって頭の痛いデータがあります。発電した電力を消費者に届ける送電線を支える鉄塔は国内に約25万基ありますが、実はそのうちの約7割は建設から30年以上が経ち、10年後には50年以上になる鉄塔が全体の約半数を占めるようになるというのです。鉄塔は常に風雨にさらされているため、経年で腐食による劣化が進みます。
つまり、近い将来、大幅な改修や更新の必要な鉄塔が全国で次々と発生する可能性が高いというわけです。単年度で改修にかけられる費用には限りがある一方で、鉄塔が腐食によって損傷した場合は、停電復旧のための費用が発生するというジレンマが生じています。

鉄塔評価のための横断研究

鉄塔の経年劣化の進行度は、周辺の環境条件によってそれぞれ異なります。したがって、環境条件と経年劣化の関係がわかれば、改修や更新の優先度が決められ、予防保全型の維持管理が可能になります。こうして始まったのが、電中研内の8つの専門分野のうち材料科学研究所、環境科学研究所、地球工学研究所、電力技術研究所、システム技術研究所が協力して進めている、送電鉄塔の健全性診断法や余寿命評価法、効率的な計画・点検法の確立に向けた横断研究です。その中で材料科学研究所が担当しているのは、金属腐食の観点からの健全性評価であり、外からは伺うことのできない鉄塔の鋼管部材内部の腐食を、どのように把握するのかという課題に取り組んでいます。

劣化診断のマニュアル化に向けて

材料科学研究所では、横須賀地区に大気腐食モニタリング(ACM※)センサを付けた鋼管を配置してフィールドワークを開始し、鋼管内のどの部分が腐食しやすいかのモニタリングを行いました。腐食しやすい場所がわかれば、現場での評価がよりスムーズになり、改修・更新工事の計画が立てやすくなるというわけです。現在はデータの収集・分析の途中ですが、いずれ各研究所で得られた成果を統合し、「健全性診断支援マニュアル」として完成させ各電力会社に提供していく予定です。日本全国待ったなしの鉄塔改修に不可欠なマニュアルとして、電力各社から大きな期待が寄せられています。

※ACM=Atmospheric Corrosion Monitor

材料科学研究所

「材料は社会・世界を変える」をポリシーに、あらゆる技術分野にブレークスルーをもたらすキーテクノロジーである材料技術の研究と開発を進めています。電気事業をはじめエネルギー産業における材料問題のソリューション・プロバイダーをめざす研究所です。