津波対策に向けて


東日本大震災による津波被害の大きさは、発電施設や送変電・配電設備の津波対策の重要性を教えてくれました。二度とこのような被害を繰り返さないためにも、発電所の耐津波性能を高めることが重要ですが、そのためには津波対策を検証・評価する方法を確立する必要があります。しかし、耐津波性能を検証しようにも、津波をリアルに再現できる実験施設はこれまで存在していませんでした。1/100や1/50といった規模のものはありましたが、その程度では実現象との乖離が広がり、信頼できるデータを得るのは容易でありません。そこで、地球工学研究所として取り組んだのが、実現象に近い陸上氾濫津波を数分の1スケールで再現する実験施設の開発でした。

未知だった津波の作り方

スケールアップといっても単純に従来の施設を大きくすれば、実現できるわけではありません。津波の場合、一般的な波浪による現象とは全く違うため、津波のつくり方それ自体を新たに“開発”しなければならなかったのです。津波現象を分析し、どうすれば実験施設で再現できるのかという観点からの基本設計、試作を行った結果、2014年2月、従来では不可能だった大縮尺での耐津波性能評価試験のできる津波・氾濫流水路を完成しました。バルブとゲート、堰を連続的に制御することで様々な津波の流れを任意に再現できる、世界で初めての実験設備です!

生み出される実験成果

この津波・氾濫流水路では任意の流速や水深が自在に再現できるため、学術的な成果が次々と生み出されています。たとえば、津波による漂流物がどのように、どれくらいの衝撃を与えるのかについての検証では、軽自動車や木材を漂流・衝突させる実験を行い、貴重な実規模データを得ることができました。電力施設に関わらずあらゆる建造物の津波対策が今後、進められていくでしょうが、この津波・氾濫流水路は、そのような津波対策の効果の検証や、合理的な津波対策を考える上で有効な確率論的リスク評価(PRA※)における耐津波評価技術の整備において,たいへん有効な技術です。

※PRA=Probabilistic Risk Assessment

地球工学研究所

地質・地盤・地下水・地震・材料・構造・流体・気象など自然を対象とした研究を柱として、電力施設などの社会基盤の立地・建設、災害軽減・メンテナンス、使用済み燃料の輸送・貯蔵、放射性廃棄物の処分、原子燃料サイクルバックエンドに関する研究開発に取り組んでいます。