火力発電所アセスメントのために

火力発電所の建設や設備更新にあたっては、発電所から排出される排気ガスが周囲の大気環境にどのような影響を与えるのかを事前に予測しなければなりません。この予測のために、発電所周辺における気象観測や模型を使った風洞実験などを行うと、多額のコストが掛ることになります。近年では実験の替わりにスーパーコンピュータを用いた数値解析を行うことで、以前より安く早く予測することができるようになりましたが、それがパソコン上で短期間かつ低コストに実現できれば、その恩恵は計り知れません。
このような期待の中、2011年には環境省のガイドラインが改訂され、火力発電所のリプレース事業によって環境負荷の低減が図られる場合に、現地調査に替わって感度解析による大気質予測が認められることとなりました。この改訂により、数値解析によりコスト削減を実現するという道筋を見いだすことができたのです。

使いやすさという性能

もともとは自らの都市大気環境の研究用として開発してきたツールでした。そのツールを風向きや風速、大気安定度などを組み合わせた複数の条件での感度解析が短時間で実行できるものへとバージョンアップし、大気質の予測からアセスメントの事前検討、さらには環境影響評価書を作成できるものへと改善しました。開発担当者が一番にこだわったのは使いやすさです。ツールを使用する現場を念頭に、システムに精通した人だけでなく、ソフトに関する知識がなくても使いこなせるツールであることを重視。使いやすさという性能を徹底して追求したわけです。

劇的な低コスト化を実現

こうして開発したツールについて研究成果を発表したところ、電力各社などから「使いたい」との問い合わせが寄せられるようになったため、2014年に「火力発電所大気アセスメント支援ツール」としてリリースしました。使いやすい点や短期間で結果が導き出せる点だけでなく、大気アセスメントのコストを数分の1から10分の1にまで削減できる点が大きく評価されています。いわば、大気アセスメントのブレイクスルーを達成したわけです。使っていただいている方からは「使いやすい」との声に加え、「こうしてほしい」とのさらなる改善の要望も寄せられており、ツールのバージョンアップを行い利用者の期待に応えることで、電力の安定供給の要である火力発電をアセスメントの効率化の面から支えていきます。

環境科学研究所

大気、水域、陸域、生物・生態系、バイオテクノロジーなど幅広い分野で、地球温暖化の科学的評価、化学物質や電磁界などの環境リスク評価、発電所の環境アセスメント、石炭灰のリサイクル、バイオテクノロジーを活用した環境技術の開発に取り組んでいます。