雷という未知

634mの高さを持つ東京スカイツリーが世界一高いタワーだということはご存知でしょう。ところが東京スカイツリーにはもう一つ、別の世界一があって、それが雷電流測定のできる塔としても世界最高だということです。500m超で同じ観測装置が付いている塔にカナダ・トロントのCNタワーがありますが、これは553m。雷にはまだわからないことが多く、自然雷の特性を探ることは高層建築物への耐雷対策を行い、雷撃リスクを評価するためにも不可欠。年間雷撃密度が2回/km2程度という東京都心にあって、これだけ高い建造物に観測装置を設置し、日常的にデータが取得できることはきわめて有意義なのです。

世界唯一のコイル

東京スカイツリーに雷電流測定装置を付けるというプロジェクトは電中研と東武タワースカイツリー、東京大学の共同研究として進めています。電中研が担当したのは、高さ497mに設置する電流測定用のロゴスキーコイルの仕様決定と設計、製作、そして評価です。雷撃電流全体の波形を測定するコイルと電流波形のピークと峻度を測定するコイルの2種類があり、設置場所のタワー構造物の形状に合わせて六角形になっていて、対角長が約10m。これだけ巨大になると広域の周波数特性を確保するのが難しいために2本構造とし、また1本のコイルで全周分を作ることができないため3分割することになりました。文字通り、世界で誰も作ったことのない、世界で唯一のコイルです。

待たれる観測成果

誰も作ったことがないということは、参考にすべき装置も設計もないということです。それにも増して研究者を悩ませたのは、試験・検証する方法がなかったこと。そこで実験用のプロトタイプコイルを製作し、当所の塩原実験場で雷インパルス電流による応答特性の評価を行いました。結果は良好で、2011年の夏には設置用の最終コイルが完成。11月に東京スカイツリーへ設置することができたのです。2012年から実際の観測が始まりましたが、測定結果とそれによる雷の特性解明への期待が高まっています。

高周波用ロゴスキーコイル出力とシャント抵抗で得られた波形を比較したところ、測定限界以上である波頭の急峻部分を除き、ほぼ一致した波形が得られることがわかった。

電力技術研究所

電力流通設備の信頼性と安定運用をハード面から支える根幹技術を研究します。専門分野を「高電圧・絶縁」「雷・電磁環境」「高エネルギー」「電力応用」の4領域に分けて研究を進めており、また大電力試験所(横須賀地区)と塩原実験場(栃木県 那須塩原市)を附置しています。