注目されるPRA

東日本大震災に起因する福島第一原子力発電所の事故以来、原子力施設に対する安全性が厳しく問われるようになっています。そうした中、安全性向上に役立つ手法として注目されているのが、PRA※と呼ばれる確率論的リスク評価です。限られた数の事故の組み合わせを想定して安全性を確認する従来の決定論的な手法とは異なり、想定されるあらゆる事象の発生頻度と発生時の影響を定量的に解析して「リスク」を算出し、安全性を評価しようというものです。2014年10月に発足した『原子力リスク研究センター』は、こうした手法を用いて、電気事業者の自主的な安全性向上の取り組みをたゆまず支援していきます。

※PRA=Probabilistic Risk Assessment

確率論による安全性評価

PRAは、事故が起こる確率を算出することだけが目的ではなく、むしろ、事故は起きるものとして捉え、事故がどういうシナリオのもとで起こり得るのかを現場の実態に照らして把握するツールです。「リスクはゼロではない」という発想のもとで、現在の実力を把握し、どこに弱点が潜んでいて、これからどのような対策を打つことが全体として効果的であるのか、戦略的に見極めます。一方で、PRAといえども不完全な部分が残り、また評価に使われるデータにも常に不確実さが伴っています。その不確実さについても定量的な評価を行うことによって、意思決定をする上での判断材料をできるだけ定量的に提示することができる点もPRAの強みです。

国民的なコンセンサス形成に向けて

原子力施設の安全性評価と言うと、原子力発電所の再稼動に関するもののみを行っていると思われるかもしれません。しかし、リスク評価の目的はそうした短期的なものだけにとどまりません。今後の原子力発電をどうするのか、どう対応していくのかという国民的なコンセンサス形成のためには、その判断の基準となる安全性評価が必要になってきます。情緒的ではない、科学的かつ合理的な判断をしていくために、PRAに基づく安全性評価が有効であると考えられます。原子力リスク研究センターは、低炭素社会における重要なエネルギー源の一つである原子力発電に対する客観的な評価に資する研究を行っていきます。

原子力リスク研究センター

確率論的リスク評価であるPRAをはじめ、リスク情報を活用した意思決定、リスクコミュニケーションの最新手法の開発と活用を通じ、原子力事業者および原子力産業界を支援し、原子力施設の安全性向上に貢献する研究を行っています。